CCP による OTC デリバティブ取引の清算義務化とそのビジネス・モデル ( 全 2 回 ) No.2

2015年09月23日 03:42

第2回 OTC デリバティブ取引の清算義務化に伴う各セクターの収益機会

 前回でも記載した通り、「2009年9月のG20ピッツバーグ・サミット宣言」および「2010年10月の金融安定化理事会の『店頭デリバティブ市場改革に関る勧告』」等を受け、中央清算機関(以下、CCP)によるOTCデリバティブの清算義務化は、グローバルな潮流となっている。国内においても、改正金融商品取引法(2012年11月施行)を始めとした各種法規制により、国内でのOTCデリバティブ取引の想定元本ベースの90%以上が清算義務化の対象となり(前回記事参照)、国内のCCPである「日本証券クリアリング機構(以下、JSCC)」によって、当該OTCデリバティブ取引の清算サービスが開始されている。つまり、想定元本ベースで、OTCデリバティブのほとんど全ての取引に対して、金融機関やその顧客が直接的に清算するのではなく、CCPを通じた清算が義務付けられたのである。バティブ取引と合わせた「OTCデリバティブ取引のトータル・パッケージ」として顧客に提供する事ができ、これにより顧客の囲い込みに繋がると考えられる。この清算代行サービスは金融機関の市場系部門の新たなビジネスに成長すると著者は考えている。
 この清算代行サービスは、「CCP会員の金融機関(以下、メンバー金融機関)」と成り得る大手の金融機関に限られるビジネスであるが、市場規模および取引規模を鑑みた時、大きなビジネスになると著者は考えている。 加えて、CCPによる清算義務化によって、カウンターパーティ・リスクの軽減やOTCデリバティブの流動性の拡大、および取引自体の透明性の向上が期待できる。そのため金融機関は自己のポジションを使わず、顧客間の注文をマリー(マッチング)するサービスも提供できると考えられる。今後は、顧客間の注文に対するマリー・サービスを提供する金融機関も増えてくると考えらえる。
 この様なCCPによる清算義務化に伴う金融機関の市場系部門の新規ビジネスの可能性を踏まえ、金融システムをソフトウェアおよびハードウェア等のシステム・インフラ面で支えるSIベンダーの収益機会の可能性に言及したい。
 メンバー金融機関はCCP清算業務を行うために、自身の取引管理・口座管理システムとCCPの清算システムとのチャネルを開通させばければならない。このシステム基盤投資はメンバー金融機関にとっては必須のシステム投資であり、基盤系・インフラ面に強いSIベンダーおよび業務アプリケーション開発に長けたSIベンダー双方の収益機会と成り得る。加えて、上記で記載した「OTCデリバティブ取引のトータル・パッ 上記のようなOTCデリバティブ取引のグローバルな潮流を鑑みて、この規制に伴う金融機関の市場系部門の収益機会、および市場系部門の収益機会をITインフラ面で支えるSIベンダーにとっての収益機会を述べていきたい。
 大規模な金融規制は、金融機関の市場系部門にとって収益機会を損なうものが多いように思われる。しかしながら、本件の「OTCデリバティブ取引の清算義務化」は金融機関の市場系部門に新たな収益機会をもたらす可能性があると著者は考えている。 OTCデリバティブ取引における金融機関の市場系部門の顧客は、同業種の金融機関はもちろん、保険会社や資産運用会社、ヘッジファンドや一般事業会社等に多岐にわたる。そして、OTCデリバティブ取引のCCPでの清算義務化によって、顧客にもCCPでの清算・決済・担保管理等の清算集中業務が強いられるのである。ここに金融機関の収益機会の1つがあると著者は考えている。顧客に対して金融機関が保持・運用しているCCP向け清算システムをバンドリングさせることで、清算代行サービスを提供するビジネス・モデルである。これは、清算業務に必要なシステム・インフラや人員等を顧客に準備させる必要がなく、デリケージ」を実現するために、顧客に対してCCPとの開通している自身の清算システムをバンドリングし、顧客からの取引注文をCCPへ送信するシステムの構築が必要である。このシステム構築には相応のシステム投資が必要であるが、顧客の囲い込みおよびメンバー金融機関同士の競争によってもたらされる取引サービスの向上が期待で、金融機関にとっては戦略的投資となると考えている。ここでもハードウェアおよびソフトウェアの双方でSIベンダーにとって収益機会が存在する。さらに、金融機関の「OTCデリバティブ取引のトータル・パッケージ」の営業と同時に、SIベンダーのシステム営業も行えるのである。金融機関が顧客を囲い込む事で、SIベンダーもまたシステム・ユーザー(金融機関の顧客)を囲い込む事が出来るのである。
 メンバー金融機関の業務プロセスも追加されると考えられる。メンバー金融機関は自己および顧客の取引ポジション等を分別管理する必要等、CCPと連携するために様々な業務が新たに発生すると考えられる。業務プロセスをシステム化するSIベンダーにとっての収益機会である。
 その他、OTCデリバティブ取引のマリー・システムの提案・開発等、「OTCデリバティブのCCPによる清算義務化」よってもたらされる、SIベンダーの収益機会は多いと考えられる。JSCCの清算システムには有名海外ベンダーのシステムが導入されており、多くのシステムとの親和性は高いと考えられ、チャネル接続および業務アプリケーションの開発は、多くのSIベンダーにとって業務領域となりうる。今後ともOTCデリバティブ・ビジネスに注視していきたいと考えている。